小林玲子ブログからのお知らせ

eランニング通信

グンゼSP eランニング通信 第11号

今回の「グンゼスポーツ eランニング通信」は、「上り坂と下り坂」についてお話します。
「上りではすぐに息切れしてしまい脚が重たくなる」、「下りではブレーキをかけてしまいスピードが上がらなく平地に戻ると脚がだるくなってしまう」と、よくお聞きします。
まだまだ体力がない、筋力が不足している・・・などと皆さん、謙虚に自己反省されますが、「上り坂、下り坂」という平地ではないところを走るとこのような感覚になるのは当然なのです。
ではまずは、坂の傾斜についての知識を。
傾斜の程度を、5%とか5度とかいいますが、通常ランニングに世界は、%で傾斜を表します。水平距離に対して、どれくらいの距離が垂直方向に上がっているかで計算します。100mの水平距離で1m上がっていれば1%の傾斜ということです。フルマラソンで前半のハーフの折り返しの21kmまでに420m上がっていてれば平均2%の傾斜です。傾斜2%というのは、角度に直すと1.15度、傾斜10%は5.7度です。トレッドミル(ランニングマシン)で表示されている傾斜も%です。3%(1.7度)程度でも走り続けるとすごい負荷を感じますよね。
次に、上り坂について・・・
まず、フォームに関しては意識して大きく平地と変える必要はありませんが、着地地点が上方向になるため腰が引けやすくなるのでその対策として、ややカラダ全体を前傾して上ります。またストライドは狭くし腰の下、重心の下で着地する意識です。ピッチ(脚の回転数)は平地と同じピッチを維持し、走りのリズムを維持しましょう。
上り、つまり傾斜がついているのですから同じ走速度で考えると、水平に走るときよりカラダをさらに上方向に持ち上げないといけないので、カラダへの負担(運動強度)が大きくなります。心拍数は上がり心臓はバクバクしるし、筋肉については下半身のほとんど全ての筋をより多く使います。
10kmなどの短いレースでは、この点を注意し坂に負けない強い気持ちで頑張ります。
で、市民ランナーのハーフマラソン、フルマラソンでの上り坂克服のポイントは、これとは異なります。坂に負けない心臓と脚を日頃の坂道トレーニングで強化する!ということを考えてしまいますが、これは不正解。
いくら強化しても、頑張って上る限りいつもしんどいのです。
上り坂では、頑張らずに走ることがポイントです。
頑張らないというのは、ペースを落とすことです。傾斜がついている分、ゆっくり走るのです。息が上がらないように走る、体に感じる運動強度を平地と変えない、平地での心拍数を維持するように走る、ということです。
次に下り坂についてです。
下り坂では、どんどんスピードがでます。そのスピードを殺さずに、いかにブレーキをかけずに下っていくかポイントです。足が腰から遠い前すぎる位置で着地すると、脚の接地時間が長くなり、その間に太ももの前の筋肉のブレーキ(脚が曲がらないように踏ん張る)時間も長くなるので脚の負担も大きくなります。接地時間を短くするため、腰の真下のイメージで着地し、地面の反発を受けて跳ぶように駆け下りていくということです。ただ跳ぶように駆け下りる技術は、とても高度なテクニックです。
10kmまでのレースで傾斜があるコースではこの点を意識し下っていきます。
ハーフマラソン、フルマラソンでの下り坂克服のポイントは、ブレーキをかけてしまうようなスピードアップはしないことです。少しカラダを前傾し、体の軸が下り傾斜と直角になるようなフォームで下りますが、上りと同様ストライドを狭めピッチ走法で下っていきます。太ももの前を使わない意識を保ちます。
ところで、フルマラソンのコースの傾斜ってどれくらいでしょうか? 
フルマラソンは、長時間にわたり道路を規制しないといけないので、郊外の山間部を走るコースが多く、傾斜もまあまああります。近畿地方では3月篠山マラソンがその代表格の大会ですが、その篠山の累積の高度は、上りで140mです。つまり半分の21kmで140mですので、平均傾斜は0.7%。コースの中で最もきつい傾斜は、700mの水平距離で25m上がるポイントがあり3.6%です。
都市型マラソンでは市街地を走るのでコースはほぼ平坦で、神戸マラソンは42kmで40m上って40m下る程度です。傾斜は0.数%です。でもあの高架ではしんどかったよ・・・と言われる方もおられますが、その500mとか1kmの区間の坂は確かに上っていますが、全体のほんの数%のことで90数パーセントはフラットです。
なのでフルマラソンでは特に、そんなに少しの坂道の時に敢えて頑張らない、というのが賢い走り方です。前半のオーバーペースもそうですが、頑張るとそのツケは必ずラスト10kmぐらいから数倍返しで襲ってきます。
オーバーペース、頑張る、息が上がるということは、糖質の燃焼割合が高くなり、筋肉の中の限りあるエネルギー源、グリコーゲンの無駄遣いになります。カラダにはリズミカルな一定負荷の負担、一定の心拍数で、淡々と走っていくのが省エネ走法です。
ただ、30kmを越えてからは、ちょっとした坂でも脚に負担を感じますので、坂にやられた・・・という様にレース後思いますが、30km以上をしっかり走れる脚作りを日頃の練習の中で地味重ねていけば、レース本番での坂も楽に上れるようになります。
よって練習も、上り坂とか下り坂とかを特に意識してレースシーズン中の練習計画に取り入れる必要はないでしょう。ただ、春から夏の基礎的な走りこみに時期に暑さ対策を兼ね山間を走ることで脚の土台づくりを目指したり、またシーズン中でも時間がない時には上り坂下り坂で頑張り、短時間でカラダに大きな運動刺激を与えたりということで一部練習に取りいれてください。